ミク。
それから約10年。私は主様と共に残された僅かな時を静かに過ごした。
時には主人と介助ロボットのように、時には昔の恋人同士のように口づけを交わし、命ぜられるまま求めに応じる夜もあった。そんなある晩、一夜だけの奇跡が起こった。

『おぃ、フィン…フィンなのか?』

心臓のガラスのせいで日に日に体力が衰えてゆく反動で最近は酷い高熱を出してばかりだった為、すっかり衰弱しきっていた彼の世話を二十四時間つきっきりでしていた私が新しい氷と身体を拭く為のタオルを持ってリビング兼寝室に戻った時、だ。彼が重い身体に鞭打ってどうにか寝かされているベッドから起き上がろうとしていた所で目と目がかち合って呼ばれた。

『フィン…‥』

「ブラック!」

私にはすぐ分かった。彼なんだと。ロボットである私をお嫁にしてくれた、ブラック。

『やっと、出来たんだな…‥』

崩れるように力の無い高熱の腕を伸ばしてきて私を昔のように抱き締めようとしてくれた彼が真実を教えてくれた。

『俺、義父がしてた研究の本みつけて、必死で学者になったんだ。お前を捜す為の、未来と今を結ぶ装置造ってた………何度もブッ壊れたが、やっと出来たか』
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