ミク。
それから二年後、冬は二番目の育母となる女性の元へ移る事になり、大好きな彼女と別れる事になった

「行ってきます、姉さん」

大きく手を振って、爽やかに笑って、美しい思い出だけを抱いてお別れしたけれど、これが珠里夜にとって、明るくて愛らしい彼を見た最後の記憶で、育母は強くて優しくてなんでも教えてくれるヒトなんだと、冬が育母という者を信じていられた最後の瞬間だった
。と、いうのも、彼はその絵に描いたよりも美しい美貌と色気のせいで望まない仕打ちを受ける身になってしまうからだ。

 [秋冬の神様は実に御美しいですね]

「………」

[お噂では既に持つ力を全てコントロール出来るんだとか?]

「…‥まぁ…。」

[でしたら私が教えるべき事は、あれだけですね]

引き取られた日の夜、宛がわれた部屋に設置されていた広過ぎるベッドに横になっていたら軽いノックが二回程響いて灯りを持った新しい育母が妖し気な面持ちで扉を開けて入るなり内側から鍵をかけてこんな事を言って来た為、冬は少々見えない恐怖に身を固くしながら質問する。

「あれって、なんです?」

育母は、冬が良く知る珠里夜と同じ笑みでは無く、オンナという生き物独特の笑みを浮かべながら化粧で造りたてた顔を近付けながら持っていた灯りを手近な台の上に置き、手を伸ばし、真っ赤な唇を近付ける。
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