【完結】 甘い罠〜幼なじみは意地悪女~
ある日、夕飯を食べながら、母親が嬉しそうに話していた内容に、耳を疑っていた。
「最近、美沙ちゃん、ますますきれいになったね?」
「そうか?」
あんなんただの暴力女やし。
「母さんが思うには彼氏ができたんやからやと思うねん」
「か、彼氏?」
美沙に彼氏?
まぁ、いてもおかしくないよな?
あいつ、気が強いのを除いたら、顔はいいし、スタイルもいいから、モテるやろうし・・・。
そうそう・・・・・・別に自然なことやし。
俺は、初めて聞く『美沙の彼氏』の存在に少々動揺していた。
別にあいつに彼氏がいようかいなかろうが、俺には関係ないし。
「彼氏ができたから、料理を覚えようとしてると思うんよ」
「・・・・・・」
好きな男のために料理?
あの美沙が?
ただ、料理を覚えたいだけじゃないん?
「それにずっとショートカットやったのに、髪も伸ばしてるし。彼氏の趣味なんかな?」
彼氏の好きな髪型にする・・・ ?
あの美沙が?
ただの気まぐれじゃね?
「それに、あのパンツしか履かなかった美沙ちゃんがスカートを買ってくるなんてね!やっぱり、彼氏の前じゃ女の子っぽい格好をするんやね」
彼氏に決定なわけ?
スカートだってさ、別に履いたっていいやん・・・まぁ、悪いとは言ってなかったけど・・・。
母親が何か言うたびに、わけのわからない言い訳ばかりをしている自分が、嫌になってきた。
あいつに彼氏がいても、どうでもいいし。
俺には関係ないし。行き場のない感情をどう処理していいのかわからなくなっていた。