BARと特別刑事課 :file>>1:
「朔…あの男の人、誰だったの?」
緋音の問いかけには答えないのに朔は特別刑事課の副課長である凛子さんに聞いた。
「やはり、あいつらが来ました。でもこの場所を知っていたあいつが自殺したのでまだバレていないと思われます。」
「…そうね。てことは本当に緋音を追ってきてるのね」
「朔、無視すんなよ!!!答えてよ!!!」
それでも朔は無視した。
「朔…課長が呼んでるってよ。」
「課長が?…わかった。」
課長と呼ばれる人は、特別刑事課で一番年上のベテラン刑事、小野寺正隆。
朔は小野寺にお世話になった。
12年前、人質を死なせてしまうという失態を犯した朔は罰として捜査一課から警備課に戻らされたところを、特別刑事課に拾ったのが小野寺だった。
BARから車で30分の所にある警視庁。
その警視庁の上の方にある。
「ただいまもどりました。」
「お、ご苦労さん。」
小野寺の座る椅子は高級なもので事件をたくさん解決してきた褒美としてもらったらしい。
「…で、なにか?」
「あー、あいつらが来たんだろ?さっき勝から連絡が来たんだ。」
「はい。来ました。やはり緋音を連れ戻しに来たんだと…」
「絶対に緋音ちゃんを守るんだ。なにがあっても組織に渡したらならない。」
「わかってます。」
「…自殺したヤツの名前だが、武藤新司だった。組織の人間だったよ。」
「武藤って、」
小野寺から名前を聞いただけで朔は反応してしまう。
武藤…
12年前、朔が助け出そうとした人質を殺した張本人だ。
「やりづらいか。やりづらければ勝にかわってお前に緋音を警護させるが…」
「いや!!!捜査します。俺にさせてください。」
「…わかった。くれぐれもヘマはするなよ。」
「はい。ありがとうございます。」
「あ、それとだ。お前らのBARの近くで見つかった死体だが、そいつも組織の人間だった。おそらく武藤とあらそったんだろうな。その死体の爪から武藤のDNAが検出された。」
「そうだったんですか…じゃあ、その時に…」
「そうだな、武藤はBARの存在を知ったんだろう」
「組織は…何がほしいんでしょうか…」
「それはわからないな。でも…」
「でも?」
「緋音ちゃんが欲しいのは確かだ。」
この時、朔たちはこの組織との対決が長びく事をまだ知らないでいた。