B級彼女とS級彼氏

 第12話~クサイモノには蓋をしろ!~

 ――「何故そんなに芳野にこだわる」

 さっきの小田桐の言ったセリフがやけに引っ掛かった。
 確かに、一応客人として迎え入れられたと言うのに、女だからと言うだけで手伝わされるとは私も思っていなかった。梨乃さんと小田桐が言ったように、ジャッ君が使い物にならないから私に頼んだのかも知れないし、小田桐が手伝うって言ったのを拒否した理由も、もしかしたらジャッ君と同じ様な理由からかも知れない。ただ、実際私が手伝った事なんて小田桐でも出来る様な事だろうし、流石のジャッ君でも出来ると思えるような事だっただけに、やっぱり何かあるのかなとイチイチ勘繰ってしまう。

 ――「聖夜さんの方がやけに歩さんにこだわっている様に見えますが」

 梨乃さんが続いて言ったセリフも、確かに頷ける。
 別にちょっとお手伝いするだけで、何をそんなに目くじらを立てたのかがわからない。例えばもしこれが、『何をそんなに芳野にこだわる必要があるんだよぉーぅ、俺でもいいじゃーん』『え~? べっつにぃ~?』見たいな軽いやりとりなら、私も大して気にも留めないけれど、あの時の二人はまさに一触即発と言った感じだった。ただ、単にゲストとして招かれた私を使うのは良くないと思ったのか、それとも――、梨乃さんと私を二人きりにさせたくなかった理由があったとか?

 ――「歩さんは、聖夜さんとは身体だけのお付き合いかしら?」

 あんな猿でも聞かずともわかる、ふざけた質問をさせたくないが為だけに、小田桐は必死で私から梨乃さんを遠ざけようとした?

「うーん……。 ――あ、もしかして」

 昨夜のお戯れ事件を馬鹿正直に梨乃さんに説明したから、梨乃さんが怒ってしまったんじゃ? そんで梨乃さんに「全部貴方が悪いから謝って来なさい! そして、ちゃんと手を切ってきなさい!」って言われたから今朝わざわざ弁解しに来たのだろうか。

 ――「悪ふざけ」
 確かに小田桐はそう言っていた。やっぱり二人は付き合っているんじゃないのだろうか。――でも、そうなるとあの「ちゃんと避妊はなさってくださいね」って言ってたあれはどう説明する?

「嫌味か、逆切れか?」

 下の息子がだらしない小田桐だから、大人の女の余裕って奴を見せつけただけ?

「うわぁっ、それだ……」

 複雑に絡み合った糸が一気にほぐれた様な気がした。
 あの二人の関係をやっと導き出す事が出来たのなら、もうここには用は無い。いや、本当に足す用も無いのに少し頭の整理をする為だけに、長い事ピカピカの便座の蓋の上に座り込んでいた私は、その重い腰をやっと上げた。


 リビングへと戻り、ダイニングテーブルへと近づく私に気付いた小田桐が、あからさまな嫌悪の表情を示した。

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