そっと鍵をかけて。
「背のびすんならこっちにしとけ」
大人ぶって塗った赤は気に食わなかったのか、嫌味のようなベージュの口紅。
こんな色似合ってたまるかとムカついて使わなかったけど、
ずっとずっとポーチの中には入れていた。
こんな朝に赤を塗る気にもなれず、気まぐれにそれを試してみる。
「さすが、先輩…」
初めて唇にのせて、これがこんなにも綺麗な桜色に発色することを知った。
清楚で、それでいて大人びた雰囲気にしてくれるその色に
彼が私にどうあって欲しかったのかを理解した。
音を立てないよう、そっと寝室に戻って
枕元のケータイに、私のケータイから外した鈴をつけた。
「おやすみなさい、先輩。」