今日も君に翻弄される。
     ***



お邪魔しました、と出て、階段をわくわく下りる。


「どこ行く?」

「たい焼き! あと唐揚げでしょ、わたあめでしょ、焼き鳥でしょ、あっ、くじ引いたらお菓子もらえたりしないかな!?」

「まずたい焼きからね」

「うん!」

「葵あれだね、顔は食べん! とか言って尻尾から食べるんでしょ」

「いいじゃんか!」

「じゃあ僕は頭から食べようかな」

「あんなに可愛いのに……! 和泉くんの非道人!」

「え、半分くれないの?」

「(そっちか……!)」


後日、和泉くんは、私服の女子と仲良さそうに歩いていた件について、多くのからかいと質問を受け。


絶対零度の瞳を向けての「黙秘する」で一蹴したらしい。



     ***



「いーずみせんぱ」

「……次それ言ったら社会的に抹殺する」

「秋庭先輩、そんな相手を凍てつかせる瞳で真剣に言わないでください! 怖いです!」

「僕は本気だ」

「だから怖いんです!」



     ***



「先輩先輩、馴れ初め教えてくださいよ」

「何で。無益だから嫌だ」

「えーと、そうだ、葵さんと仲いいって自慢できますよ」

「別に自慢したくない。言ってどうするの」

「二人だけの秘密ですかっ、ずるいです先輩ばっかり! イケメンで何でもできて可愛い彼女もいるとか何なんですか!」

「……うるさい。告白は別に、好きって言っただけだよ」


僕が葵を大事にしているって知ってるんだから、僕をからかう話の種は充分あるだろ。

これ以上は言わない。


「それから」

「はい?」

「葵って呼ばないで。そう呼ぶのは僕だけがいい」

「(うわ、さらっとのろけた……!)」
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