今日も君に翻弄される。
「……こーごーせースーパー!」

「葵」


ひねり出した特別感はまるっと却下された。


頑張ったのに。


「逃げない。はいもう一回」

「こーごーせーデラックス!」

「…………」


急に黙り込んだ気配に後ろを見上げれば。


少しだけ腕に力を込めてぎゅっとわたしを引き寄せた和泉くんが、逆さに映る。


「何で、逃げるの」


解せない、と、疑問符を投げられて詰まった。


「……えっと」


何で、なんて、理由は単純で。


そんなもの、恥ずかしいからに決まっている、ん、だけ……ど。


どもった途端、和泉くんの機嫌は急降下した。


「僕と出かけるの嫌?」


嫌ならいいよ。


いじけている和泉くん、というのも珍しい。


嫌じゃない、というか、むしろ歓迎したいよ、わたし。


和泉くんは忙しくて、なかなか一緒にお出かけできないからね。


貴重な風情の和泉くんを堪能しつつ、しっかり否定する。


「嫌じゃないよ。でもその、」
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