今日も君に翻弄される。
「や、ちがっ」

「ん?」


……ちがっ、くないけど、何でそんなに鬼畜モードなのさ和泉くん。


「何、葵」

「…………」


黙り込むわたしに落ちるのは、つややかな呼び声。


「葵?」

「――っ!」


心臓に悪すぎるよ。


妖しい雰囲気を漂わせるささやきに観念したわたしは、だから! と、脈絡もなく接続した。


「二人でいたいですよ……!」


怒ってはいないけど、怒っているみたいになってしまったのはご愛嬌。


和泉くんが満足げなので、言わされてる感満載だったのには目をつぶろう。


でも、当然恥ずかしいことに変わりはなく。


甘い空気に耐えられなくて、話題を探す。


「い、和泉くんチョコの匂いする!」

「…………」


結論。


和泉くんの沈黙が痛かった。


「(逃げたけど、まあいいか)」

「(うううう……)」


背中で苦笑した気配を察知しているのは、振り向けないから。


ちょっと……さすがに、火照った顔をさらせないもん。


頑なな態度を崩さないままで、会話が続行。
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