Arcana of heart

「紡錘霰。」

俺の体を氷が包み込んだ。

「何すんだトーマぁ・・・」
「お前の負けだよ、御霊。」
「はぁ?てめぇなに言って・・・」
「お前尻尾出てんぞ?」
「え?あぁっ!!!」

御霊さんの着物のお尻から、尻尾が三本生えている。これは・・・

「き、狐!?」
「あと、耳も隠せ。」
「わあああっ!」

ひょこん、としまわれる尻尾と耳。その後へなへなと座り込む御霊は、

「はぁ・・・やられたわぁ・・・。まさか見られちゃうとはねぇ・・・」
「あの・・・御霊さんって一体・・・?」
「ああ、御霊は妖狐なんだ。まぁそのせいで色々苦労してるらしくてな、隠してたんだよ。」
「はぁ、なるほど。だから狐火か・・・」
「やらかしたわぁ・・・アタシの負けだよ。」

立ち上がった御霊は、俺のところまで来ると俺を指差してこういった。

「アンタに1つ、スペルを教えてあげる。使うかどうかは自由だけど、折角教えるんだから絶対優勝しなさいよ?出来なかったらアタシに体を(へぶぅ」
「いいからさっさと教えてやれよ。」

トーマさんが小突くと、御霊さんはしぶしぶと言った様子で二歩ほど下がると、

「火縄《フレイムロープ》。」

そう呟くと共に御霊さんの両手に出現した赤い紐。それは生きているかのようにうねうねと動いている。

「これはフレイムロープ。自分の好きなように動かせる炎の紐で、長さと本数を自由に変えれるんだ。それに、自分のスペルを流すことも出来るんだ。ただ、発動すると相手に紐が見えちゃうからそこは気をつけ無いとね。」

そう言いながらロープをしまうと、どこから出したのか赤い透明な球を取り出した。

「ほれ、この中にフレイムロープのスペルを閉じ込めてある。アンタがこの球を割ればアンタも使えるようになるよ。まぁ使いこなせるかどうかは・・・アンタ次第だね。」

そう言って渡された球。なんとなく勿体ない気がして割るのを躊躇ったが、割れと言われてるので叩き割った。すると、炎のようなものが俺の体を包み、そして吸い込まれるように消えていった。

「とりあえず使えるようにはなった・・・か?」
「使ってみりゃ分かるだろ。」
「それもそうか。んじゃ・・・火縄!」
「お、ちゃんと出たねぇ」
「そんなに疲労もしないし・・・いいスペルですね。」
「使い方によるわよねぇ。」

俺が火縄をしまうと、トーマさんが近づいてきてこう言った。

「どんなに使いやすいスペルやスキルでも、使い方を間違えれば意味がない。新人戦ってのは新人にそれを教えるための企画なのさ。戦いに意味なんて無い。ただ、それに気付いた奴が勝つんだ。頑張れよ。」

そう言ってトーマさんは練習場から出ていった。もう時間も遅い。俺も帰ろうとすると、ハンスが話しかけてきた。

「これからアークライトの館に戻るが、少し寄りたい所がある。ついてこい。」

そう言って出ていった。その後リューナさんとリンが来て、

「今度はうちらとも戦ってよね!」
「よろしくお願いしますね」

と、言って御霊さんと出ていった。
俺は一人空を仰ぎ、

ーーーやってやるさ。

そう呟いて訓練所を出た。
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