名前を教えてあげる。
汗っかきの恵理奈の髪は束っぽくなっていて、このまま洗髪せずに明日、登園させれば、保育士たちは問題を嗅ぎつけるだろう。


それは避けたかった。



このところ、恵理奈を迎えに行くと、園長室にいるはずの園長が、わざわざ引き渡しに出てくるようになっていた。






勤務先の小さなカラオケボックスまで車で20分。

車のハンドルを握る間は思考が冴え、昔のことを良く思い出した。




小さな頃、多分、小学2年生くらいの時。
お姉さんが言った言葉を思い出す。


『男の人と女の人が結婚すると、こうのとりっていう大きな鳥が赤ちゃんをプレゼントしてくれるんだよ。おめでとうって』


今考えてみても、そんな話、なぜお姉さんがしてくれたのか分からない。

多分、美緒が『赤ちゃんてどうやって生まれるの?』って質問したんだろう…


お姉さんは顔を真っ赤にしてたっけ…


あのお姉さんは今、どうしているのだろう…名前は『ゆかり』で7歳くらい年上だった。

お姉さんといっても、血のつながりはない。年上をそう呼ぶのが普通だっただけでアカの他人だ。


ゆかりはいつもセーラー服を来て、髪を2つに括っていた。


< 3 / 459 >

この作品をシェア

pagetop