名前を教えてあげる。


その月の半ばに合格発表があり、順が見事に第一志望大学合格を果たした。

受験の為に、去年の12月から順の実家に預けられていた恵理奈も、来月の頭には帰ってくることになった。


1歳になると、一升の餅を背負わせて子供の成長を願うという行事があるときいた美緒と順は「知らなかったね」「面白いね」と言い合い、恵理奈の誕生日にやる予定にした。


順の話によると、すっかり恵理奈の可愛らしさにとりこになってしまった順の母・春香は初孫ともっと一緒にいたいとタダをこねているらしい。


「受験終わったし、もう恵理奈、返してって頼んだら、4月にシンガポールから父親が帰ってくるから、それまで預からせてって。
賑やかだったのが、いきなり1人ぼっちで取り残されるなんて、寂しくて仕方ないって母親が言うんだよ」


順が済まなそうに言う。


美緒の前では自分の親のことを『母親、父親』と呼ぶ順だが、実家に帰ると『ママ、パパ』に呼び名が変わる。

ちょっとマザコンぽくて美緒は嫌だった。
……口に出したりはしないけれど。


「来月の終わりくらいに身内だけの婚約パーティーをして、6月に式を挙げたらどうかって母親が言うんだよ。
ハネムーンは大学の夏休みにしたらちょうどいいって。

それで、ハネムーンから帰ってきたら、セキュリティのしっかりした新築マンションに引っ越ししようか?」


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