名前を教えてあげる。
美緒が暮らす三田村学園の八畳一間の部屋は、3人が同室だった。
美緒が1番年長だったけれど、告げ口を恐れて園内では電源をオフにして、通学バッグに入れっぱなしにしていた。
携帯電話を充電する時はバッグに入れたままして、音楽プレイヤーを充電している、とごまかした。
中3と高1の彼女達が美緒の持ち物に触ることはない。
『年上を敬え』というモットーを持つ園長は、体育会系のノリで、年長の者には敬語と節度ある態度で接するようにと入所児童達を厳しく指導していた。
(姉妹兄弟の間がらでも)
「いいよなあ、気前いい彼氏がいて〜私なんて、携帯料金、先月2万とかいっちゃってさ!
これじゃバイト代、無くなるって。服買えねえ〜」
真由子は美緒の机に尻を乗せ、両足をパタパタと交互に振る。
「真由子、あんた、パンツ見えるって」
美緒は悪戯っぽくスカートの中を覗く真似をした。
高校で同じクラスになって仲良くなった真由子は、美緒が心を許せる貴重な友人だった。
15歳の春。
クラスメイト達は真新しい制服に身を包んでいるのに、美緒は園長がどこからか譲り受けてきたお古の制服だった。