名前を教えてあげる。
真由子は、少しびっこをひいている。
小学6年生の時、交通事故にあった後遺症だ。
そのせいで彼女は体育の授業に参加せず、いつも教室に居残りしていた。
「うん。あともうちょっとで、クリア」
ひょい、と真由子が美緒の携帯の画面を覗き込み、眉をしかめた。
「うわ!テトリスなんて今更やってる!ダッサ!」
「うるさい!いいの!」
美緒も負けじと言い返す。
笑いながら、真由子は「はい」と小さな紙袋を押し付けてきた。
ありがと、と美緒はそれを受け取り、机の横に掛けたショルダーバックに仕舞う。
夜10時以降、テレビが観れない美緒の為に真由子が録画してくれた女性アイドルが主演ドラマのDVD。
美緒が最近ハマっているのは、これとテトリスだった。
テトリスのやり方は順が教えてくれた。
赤いメタリックの携帯電話は、いつでも連絡が取れるように順が美緒に与えたものだ。
それを持たされてから、美緒の生活は変わった。
四六時中、順とメールを交わし、暇さえあればインターネットやゲームを楽しんだ。
ただ、学園の人間には、気付かれないように細心の注意を払った。