名前を教えてあげる。
けれど、順に「痛い」とは言えなかった。悪い気がして。
自分が美緒とのセックスに100%満足しているのと同じに、美緒も充ち足りているんだ、と順は信じている。
ーー大丈夫…少し我慢すれば、治る……
お腹が空き過ぎて胃が痛くなった時みたいに…
美緒が自分に言い聞かせ、下腹に手をやった時。
するり、とした何かが美緒の股間から漏れ出した。
はっとした。
生理が始まってしまったのかと、慌てて内腿の間を見る。
それは、血ではなくトロリとした白い液体だった。
美緒は忘れたふりをしていた問題を思い出した。
コンビニで、避妊具を買い忘れてしまったのを。
ホテルの部屋にも、2つばかり用意されていたけれど、すぐに使い切ってしまった。
中には絶対出さないようにするよ、という順の言葉に美緒はうなずくしかなかった。
美緒の脛から足首を伝わり、洗い場に溢れる湯に混じって排水口に消えた白濁した粘液。
もしかしたら、手違いがあって順が約束を破ったのでは…と疑念が芽生える。
でも、やはり何も言えなかった。
ーーー外に出してくれたんだよね?
そんなことを訊いては、責めてるように聞こえてしまう。
一瞬でも順の眉が翳るのを見たくなかった。