恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


なんとなく今までを過ごしてきたけど、ここ数日は色々考えたりしているし、それだけでも関係に変化が出てきてるって言えるのかもしれない。
そう思うと同時に、今まで私は由宇の事を本当に当たり前に傍にいる人としてしか捕えていなかったんだなと苦笑いが浮かぶ。

仮にも女子高生とかだったんだから、もっと色々恋愛について追及するべきだったのかもしれない。
漠然と、深く考えちゃダメな気がして、由宇もいたしで特に考えてこなかったけど。

もっとしっかり考えておけば、こんな恋愛オンチにならないで済んだかもしれないのにと悔やまれる。

「今日も星崎さん待っててくれてるの?」

多分、と答えながらエレベーターを下りて外に出ると、会社前の道路にある手すりに寄りかかっていた由宇が私を見て、よっと立ち上がる。
それを見た広兼さんが、じゃあねと私の肩をぽんと叩いて帰っていく。

その後ろ姿に、お疲れ様でしたと言ってから、隣に並んだ由宇を見上げた。

「じゃあ帰るか」
「うん。ごめんね、結構待った?」
「別に。おまえ大概トロいから待つの慣れてるし」
「そうだよね。由宇が勝手に待ってるんだもんね。文句言えた立場じゃないよね」

無言で頭を押さえつけるようにぐしゃぐしゃする由宇を、やめてよと睨むと、意地悪に笑われた。


ずっと、私に疑問すら抱かせる事なく、いつも当たり前のように一緒に居てくれた由宇。
優しいけど、言葉遣いが荒くて失礼で短気で負けず嫌いな由宇。

ハッキリしないままの私との関係を何も言わないのは、由宇も私と同じように今更言うまでもないって思ってるから?

それとも……他に何か理由があるの?






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