恋よりもっと―うちの狂犬、もとい騎士さま―


「梓織」
「……ん?」
「何かあったらすぐ俺に言えよ」
「うん。……ねぇ、由宇」
「ん?」
「何がそんなに不安なの?」

閉じ込められた腕の中から見上げた由宇の顔は、ドキっとするほど寂しそうで……思わず手を伸ばしてその頬に触れた。

下がった眉。
わずかに細められた瞳が浮かべるのは恐らく悲しみだとかツラさだとか、そういう類の感情だ。


――由宇がこんな顔するなんて、初めてだ。

そんな風に考えてから、何かが頭の中に引っかかった。

……初めて?
本当に?

でも私……こんな顔している由宇を知ってる。
いつ見たの……?

同じ体温の腕に包まれながら、そのまましばらく由宇と見つめ合っていた。
由宇の悲しみを浮かべた瞳の中に答えがあるような気がして。





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