グッバイ・メロディー
話し上手なうえに聞き上手な先輩としゃべっていたら、いつのまにか窓の外が白んできていた。
いつも超低血圧でねぼすけのこうちゃんがこんな時間まで起きていたのは信じられなかったけど、それよりトシくんとこうちゃんのウマがこんなにも合うということのほうが、わたし的には衝撃だったかもしれない。
アキくん・こうちゃんペアは言わずもがな中学時代からたくさん見てきているし、ヒロくんはなぜかものすごくこうちゃんに懐いているから、そのコンビもけっこうしっくりくる。
トシくんのほうも、まるで保育士さんのように、いつも喧嘩ばかりの半田兄弟の面倒をみているイメージがあって。
だから、こうちゃんとトシくんの組み合わせって、なかなかレアだよ。
学校で話しているのも数回程度しか見たことがない。
そんなふたりは長い時間をかけて、いろんなことを話していた。
大笑いしてどっと盛り上がったりはしないの。
たまにふっと、口角だけを上げ、そっと空気を震わすみたいにして笑みをこぼす。
そういう顔が、少しだけ似ている。
わたしはこうちゃんの隣で時たまうとうとしながら、彼らの織りなす穏やかな会話にずっと耳を傾けていた。
ふたりとも、ぜんぜん自分のことを話さない。
相手にもあまり興味がないのか、質問というのも限りなく少ない。
なんともへんてこりんな会話だった。
“誰か”や“なにか”のことばかり。
半田兄弟についてはもちろんだし、たまにわたしの話題なんかが出ると、いきなり眠気が吹っ飛んだりもした。
そうして淡々としゃべるふたりの真ん中にはずっと、“あまいたまごやき”があった。