グッバイ・メロディー


――“あんなふうに寄り添って、手放しで応援してくれるなんて羨ましいよ。大切にしないとな”


とても、噛みしめるような言い方だった。


あの瞬間、なぜか切なさみたいなものを感じてしまったのは、遠い場所に想いを馳せるような目をトシくんが見せたからなんだ。

あんな言い方になったのは、どこかでもうそれを諦めているからだったんだ。


ここまでぜんぶ、ぜんぶ、わたしの妄想だけど。


「ねえこうちゃん、トシくんはほんとに、あまいたまごやきをやめたいって思ってるのかなあ……?」


しゃべりながら涙声になってしまう。

ここ最近はなにかと泣いてばかりで嫌になる。


せまい腕のなかを体をよじってふり向くと、こうちゃんはいつものポーカーフェイスじゃなく、なにか思いつめたような瞳でじっと一点を見つめていた。


「こうちゃん」


なにか言ってほしくて呼びかけたのに、かわりにぎゅうっと抱きしめられた。

少し冷えた大きな体に、温度を分けてほしいと言われているみたいで、わたしも腕を精いっぱい伸ばして抱きしめ返した。

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