グッバイ・メロディー
「こうちゃんって何事にも無欲なふりしてけっこうしっかり強欲だよね……」
特に甘いものと、専用の係みたいな幼なじみに関してはね。
こうちゃん係の仕事はいろいろとある。
朝に起こしたり、夜に抱き枕になったり、寒いときには湯たんぽになったり、ごはんを作って食べさせたり、世の中にある係のなかでもけっこうハードなほうなんじゃないかと思うけど。
「トシくんにも……アキくんにもヒロくんにも、もっとわがままになればいいのに」
ぺたり、頬に手のひらを添わせると、こうちゃんも同じようにわたしにそうした。
親指がワイパーみたいに涙の粒を払いのけてくれる。
「こうちゃんが思ってるよりもずっとね、みんなはそうされることを嫌がらないし、たぶんむしろ、もっとそうしてほしいと思ってるはずだよ」
こうちゃんのなかにひそむ気持ち、たくさん見せてほしい。
それはお隣に住むわたしと、こうちゃんが選んで集めた3人だけが持っている、異例の特権だと思うの。
勝手に、思っているの。