グッバイ・メロディー


アンコールの2曲で締めくくると、初のワンマンライブ・HAKONIWAは幕を閉じたのだった。


順番にライブハウスから抜け出していく人は例外なく笑顔で、うれしくなる。


楽しかったね、またやってほしいね、かっこよかったね、かわいかったね、

様々の感想が360度全方位から鼓膜に届いてくるから、処理が追いつかないよ。


わたしも、楽しかった。


でも楽しいだけじゃなかった。


本当に、いろんな気持ちがぐんぐんこみ上げてきた1時間半だったな。

いっぱい泣いてしまった。


「季沙、お疲れー!」

「お疲れさまですっ」


肩を叩かれてふり向くと、みちるちゃんと衣美梨ちゃんがいっしょにいた。

開演前に会ったときより髪がちょっと乱れている。はなちゃんも、わたしもそう。


オーディエンスがほぼいなくなり、関係者や親密な知り合いのみになると、みちるちゃんがバーカウンターで高校生3人分のサイダーをいれてくれた。

自分は好きなお酒をつくって飲んでいる。


「みんなここで休みながら待ってていいよ。特に季沙は、洸介くんといっしょに帰るんでしょ?」


そしてそう言い残すと、お酒を片手にすぐどこかへ行ってしまった。

脇坂さんの古い顔見知りも多く来ているというきょう、みちるちゃんにとっても懐かしい再会がきっとあるのだろう。


残された3人でいろんなことをしゃべって時間をつぶした。


はなちゃんと衣美梨ちゃんは初対面のはずなのに、もうすっかり打ち解けて、友達みたいな感じに盛り上がっている。

そのほとんどがやっぱりあまいたまごやきの話で、4人が繋げてくれる出会いがたくさんあるんだな、と思わずにはいられないよ。

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