グッバイ・メロディー
「えええ……!!」
こんなタイミングでのふいうちのカミングアウト、心の準備ができていないから困るよ。
思わずこうちゃんの腕にしがみついたけど、彼はアキくんサイドからしっかり話を聞いていたようで、ぜんぜん驚いている様子もないの。
もしかしなくても、知らなかったのってわたしだけ?
でも、よかった。
本当によかった。
こうなればいいなってずっと思っていたんだ。
絶対にお似合いのふたりだって、勝手に想像していたから。
「じゃ、問題児そのイチはこっちで連れて帰るんで、弟クンのほうはどなたかヨロシク」
みちるちゃんはおどけてそう言い残し、表に停めてあった赤いコンパクトカーにアキくんを押しこんだ。
「俺たちも帰ろう」
こうちゃんがヒロくんに声をかけにいく。
まだ少しふてくされた雰囲気の弟は小さくうなずき、ならんで歩くこうちゃんとわたしのうしろを、同じペースでずっとついてきた。
なんとなく、ふり返ることはできなかった。
それにヒロくんも、そうされることは望んでいないだろうと思ったんだ。
温め直したチンジャオロースを食べ終わると、家出少年は持ってきた少ない荷物をそのまま、無造作にボストンバッグに詰めてしまったのだった。
「お世話になりました」
玄関先で残した言葉にこうちゃんはなにも答えない。
ヒロくんも、それ以上のことは言わなかった。