グッバイ・メロディー
⋆°。♬
真っ黒い波のいちばんうしろに、ふたり並んで座った。
袈裟を身にまとった和尚さんが一定のトーンでお経を唱えるのを、こうちゃんの肩に寄り添いながらじっと聴いている。
いつのまにかうんと背が伸びたこうちゃんの横顔、あの日よりもずっと高い位置にあって、時の流れを感じさせられてしまう。
ちょっと大人びたのは確かなのに、その表情はどこか切ない色のままで、またあの不安が胸の真ん中に生まれてしまった。
ふいに目が合う。
優しい瞳が「どうしたの」と言っている。
ふるふるとかぶりを振った。
……触っても、いいかな。
すぐ傍にある左腕に手を伸ばしてみた。
指先で触れてもなにも言わないから、二の腕をぎゅっと抱きしめて、広い肩に頭をちょんと乗せた。
自分のじゃない鼓動のリズムがかすかに伝わってくる。
体温が少しずつ流れこんでくる。
全部、こうちゃんがここにいる証。
「大丈夫」
わたしの額に口元を寄せ、こうちゃんは本当に小さな声でささやいた。
思わず泣きそうになった。
だって、こうちゃんの左手がなにかを探したかと思うと、すぐにわたしの右手を見つけて、そのまま指先がつながったから。
大丈夫って言ったくせに。
でも、大丈夫じゃなくてもいいんだよ。
伝わってほしくてぎゅっと握り返す。
ずっとギターが恋人のこうちゃんの指先、すごく硬いのに、本当に優しい手ざわりをしていて、我慢できずにじんわり涙がこみ上げた。
真っ黒い波のいちばんうしろに、ふたり並んで座った。
袈裟を身にまとった和尚さんが一定のトーンでお経を唱えるのを、こうちゃんの肩に寄り添いながらじっと聴いている。
いつのまにかうんと背が伸びたこうちゃんの横顔、あの日よりもずっと高い位置にあって、時の流れを感じさせられてしまう。
ちょっと大人びたのは確かなのに、その表情はどこか切ない色のままで、またあの不安が胸の真ん中に生まれてしまった。
ふいに目が合う。
優しい瞳が「どうしたの」と言っている。
ふるふるとかぶりを振った。
……触っても、いいかな。
すぐ傍にある左腕に手を伸ばしてみた。
指先で触れてもなにも言わないから、二の腕をぎゅっと抱きしめて、広い肩に頭をちょんと乗せた。
自分のじゃない鼓動のリズムがかすかに伝わってくる。
体温が少しずつ流れこんでくる。
全部、こうちゃんがここにいる証。
「大丈夫」
わたしの額に口元を寄せ、こうちゃんは本当に小さな声でささやいた。
思わず泣きそうになった。
だって、こうちゃんの左手がなにかを探したかと思うと、すぐにわたしの右手を見つけて、そのまま指先がつながったから。
大丈夫って言ったくせに。
でも、大丈夫じゃなくてもいいんだよ。
伝わってほしくてぎゅっと握り返す。
ずっとギターが恋人のこうちゃんの指先、すごく硬いのに、本当に優しい手ざわりをしていて、我慢できずにじんわり涙がこみ上げた。