グッバイ・メロディー


「だったらお詫びにギタ美ちゃん弾いてほしいな」


口を尖らせたまま言うと、こうちゃんはいよいよ参ったって顔をした。


「俺の部屋でならいいよ」

「だめー、ここで」

「みんないるから迷惑になる」

「そんなわけない!」


直おじちゃんのことを大好きで集まっている人たちが、こうちゃんの弾くギターをそんなふうに思うはずない。


みんなに聴いてもらいたいよ。

こうちゃんが奏でる、魔法みたいな音。


そして、直おじちゃんはずっと消えずにここにいるんだということを、誰よりもこうちゃんに知ってほしい。



いよいよ観念したこうちゃんは黙って自分の部屋へ行き、ちゃんとギタ美ちゃんを連れて帰ってきた。


ライトブラウンのボディはもうずいぶん年季が入っている。

直おじちゃんがいまのこうちゃんと同じ高校生のときに買ったというのだから、もう何年現役でいるのだろう。


再びわたしの隣に腰かけたこうちゃんがそっとギタ美ちゃんを抱っこした。

エレ吉くんよりも、ギー子さんよりも大きくて丸っこい形を、小さいころは抱えるにも大変そうだったなあと思い出す。

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