グッバイ・メロディー


「ね、こうちゃん」

「ん?」

「いつも大丈夫なの? ごはん食べてる? 洗濯してる?」

「毎回そればっか。ちゃんと自炊もしてるって」

「うそだあ」

「ほんと。たまにだけど」

「こうちゃんの『たまに』はどうせ月イチくらいだな!」


あいまいに小さく笑った。

これは図星の笑い方だ。
そして、いいかげんに逃げるための作戦だ。


やっぱり心配せずにいられない。

毎回しつこく確認するわたしに、こうちゃんはそろそろあきれているみたいだけど。


「俺は季沙が来たときだけ、ダメなやつになる仕様だから」


コーヒーを飲んだあとでこぼれた、取ってつけたような言い訳は、絶対いま思いついたやつだな。


「なんでよ?」

「そしたら季沙にかまってもらえる」

「もー!」


そういうことを言われるとわたしはすごく弱いんだ。

いつもひとりでがんばってしまうこうちゃんだから、どうしても、甘やかしてあげたいと思ってしまう。


でもそのぶん、こうして会えたときはわたしも恥ずかしいくらい甘えてしまうし、お互い様なのかも。

< 479 / 484 >

この作品をシェア

pagetop