グッバイ・メロディー


「じゃあ今度はおまえらの実力だけでやってみれば?」


脇坂さんはこうちゃんの言葉をぽんと跳ねのけるように言った。


「俺んトコにいくつかレーベルから問い合わせがきてんぞ」


さすがのこうちゃんも目を見張った。

アキくんが「マジ」と小さくつぶやいた。

トシくんが短く息を吸った。

あのヒロくんがゲームする手をぴたりと止めた。


「ひと通り話聞いてみて、ここだって思ったとこの話受けてみれば? 軽い力試しだと思って」


脇坂さんがレジ後ろの棚から、A4サイズのクリアファイルを取り出す。

メール画面みたいなのが印刷された用紙が何枚か重なって挟まっている。


「やるよ。もし今後これでメシ食ってくつもりでいんなら、若いうちから本気で動け。“旬”は逃すな」


いつものへらりとした温度じゃない、脇坂さんは親のように厳しく、そして真剣に言った。

若い4人のミュージシャンは息をのみ、それぞれが無意識のような動作で、小さくうなずいた。


――なにかとてつもないことが始まるのかもしれない。

そんな予感がして、体中にびりびりと電流が走っているみたいだよ。


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