グッバイ・メロディー


「応援、してもいい?」


なんだかうわずった言い方になってしまった。


「わたしが、こうちゃんのいちばん近くで応援しててもいい?」


こうちゃんは少し目を見張り、そのあとでぐっとくちびるを内側に巻きこむと、おでこをこつんとわたしのそこにくっつけた。


「そうじゃないと困る」


さわり心地抜群の頭に腕をまわす。
ぐしゃぐしゃと撫でる。

ああ、乾かしていた途中だからちょっと湿っているね。
あとでちゃんと続きをしてあげなきゃ。


かわいいこうちゃん。

ずっと変わらない、わたしだけのこうちゃん。


そしてこれからは、“かっこいい瀬名洸介くん”でいる時間が、少しだけ増えるかもしれないんだね。


「こうちゃんがほんとに有名になったらどうしよう!」

「嬉しいんじゃなかったの」

「うれしいよ! だからどうしよう! いまのうちにサインもらっといたほうがいいかな?」


ひとりで勝手にはしゃぎすぎているわたしをそのままに、こうちゃんは黙って再びガトーショコラにフォークを刺した。


4号をいっきに食べるのはダメだって毎年言っているのに!

すぐにわたしの目を盗んで平らげようとする、この甘党大魔神め。

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