あなたの恋を描かせて
*1*




「またねー」


「うん。また明日」



友だちに手を振って、わたしもカバンを持って教室を出る。


向かうのは美術部の部室。



わたし、水無瀬 葵(みなせ あおい)は高校二年生で美術部に入っている。


と言っても、この高校の美術部は結構いい加減、というか、自由というか……


ほとんどの人たちは喋りにここに来ている感じ。



それでも先輩の上下関係はあるから一応挨拶をする。


そのあと、わたしは愛用のスケッチブックと色鉛筆を持って外に出た。


向かう先はわたしのお気に入りの場所。



「着いた…」



ここは体育館のそばにある、ちょっとした林を抜けたところ。


抜けた先には少し広いスペースがあって、そこにはたくさんのツツジが咲いている。


入学してすぐのころ、学校を探索していたらたまたま見つけて、それからこの場所はわたしのお気に入りの場所になっていた。


友だちにも教えていないから知っているのはわたしだけ。


ちょっと罪悪感もあるけど、やっぱり特別な感じがする。



「よし、」



家から持って来たベンチに座って、わたしはスケッチブックを開いて目の前に広がるツツジを描き出した。









気がつくと手元が暗くなっていて。



「うわ、結構集中してたのかな……」



空を見上げると黒い雲が広がっていた。



「雨、降りそう……」



どうしよう……カバン部室だ。


と、とりあえず片づけしないと。


急いで片づけて部室に向かおうとするけど、途中で降ってきてしまった。



「スケッチブックが濡れちゃう……」



せっかく貰ったものなのに……



仕方なくわたしは部室に向かうのをやめて、近くの体育館に行く先を変えた。







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