あなたの恋を描かせて



明乃ちゃんは他の友だちに呼ばれてそっちに行く。


ほっと息を吐くわたしを見て、ちなつちゃんも少し苦笑していた。



「やっぱり雨のとき葵外にいたのね」


「うん。絵を描いてたら集中しちゃって。
近くの体育館で雨宿りをしていたときに送ってもらったの」



へぇ、とちなつちゃんは意外そうな声を出す。


おかげでスケッチブックも色鉛筆も濡れずにすんだんだよね……って。



「わたし、お礼言えてなかった」


「え、言ってないの?」


「送ってくれたあと、すぐ走っていっちゃったから……」



どうしよう……そういえば謝罪もできてないよ。


クラスとか分からないし、どうすれば……



「よし、行くわよ」



………はい?



きょとん、とするわたしの手をとってちなつちゃんは廊下に出る。



「ちょ、ちなつちゃん、どこ行くの?」



焦りながら聞くと気まってるでしょ、と言われて。


な、何がなんだか分からないのですが……



連れて来られたのはわたしの教室から少し離れた教室。


まだ意味の分かっていないわたしに外にいた女の子の声が聞こえる。




「ねっ、城越くんいるー?」


「まだ来てないんだってぇ」


「えー、残念すぎるー」




こ、ここって、もしかして城越くんの教室?



ちなつちゃんも教室を覗くけど、さっきの女の子たちが言っていた通りまだ来てないみたいで。



「ちっ、まだか」



し、舌打ちが聞こえたような……


そして綺麗な顔がちょっと歪んでるよ。


せっかく美人さんなのに。


もったいないよ、ちなつちゃん……





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