あなたの恋を描かせて



それにしても、どうしてちなつちゃんが城越くんのクラスを知ってたんだろう。


疑問に思って聞いてみると、知らない葵の方が珍しいわよ、と言われてしまった。


名前ぐらいなら知っていたけど、そこまで有名だったとは……



「じゃあ、なんで今ここに来たの?」


「こうでもしないと、葵はいつまで経っても行かないでしょ?」



う……そんなことない、とは言いきれない。


確かにお礼と謝罪はしたいけど、城越くんみたいな有名な人に会うのはわたしにはそれなりの勇気が必要で。



「で、でも、まだ来てないみたいだし、今日は戻ろう?」



ただ単に、まだ会う心の準備が整っていなかったりするんだけど。



「あぁ。それなら大丈夫よ。今来たから」


「……え?」



後ろを指さされ、振り向いて息をのむ。


なぜなら、城越くんとその友だちがこちらに向かって来ていたからだ。


城越くんの姿を見た瞬間、ドキッと心臓が一瞬高鳴る。



「あ、おはよーちなつ」


「おはよ、颯(はやて)」



ちなつちゃんがニコッと笑って、城越くんの隣にいる人に話しかけた。


この人、颯くんって言うんだ……


ちなつちゃんの知り合いかな。


そんなことを考えていると、あれ?と目を向けられてびくっと肩が揺れた。



「……誰?」



その質問が自分に向けられているものだとはすぐに分かったけど。



「あ、の……」



あまり慣れていない視線に、わたしはちなつちゃんの背中に隠れてしまった。




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