あなたの恋を描かせて



どのぐらいそうしていたのか分からない。


けど、息をするのが苦しくて。


ギュッと城越くんの胸元のシャツを握りしめると唇が離れた。



「はっ、ぁ……はっ、」



ガクッと足の力が抜ける。


わたしはそのまますがりつくように体を城越くんに預けた。



今、雨でよかった……


顔が火が出そうなぐらい熱くて、冷たい雨がヒンヤリして気持ちいい。



いつの間にか右手が自由になっていて。


息を整えてボンヤリとした意識の中、わたしは城越くんを見つめる。


暗くて、城越くんの顔が見られない。



今、あなたはどんな顔をしているの……?



「城越くん……」


「、ごめん」



……え?



はっとしたときには遅くて。


離れていく温もり、遠くなっていく背中。



「待、って…行かないで……!!」



でもわたしの小さな願いは雨の音に消されてしまい。


城越くんの背中は見えなくなってしまった。



「城越くん……!!」



どうして……?



「ズルいよ……」



まだ、感触が残ってる。


体が覚えてる。



抱きしめられた腕の強さも、掴まれたときの手の体温も。


キス、した柔らかくて、甘い感覚も……



確かに、いきなりでびっくりしたけど。


それでも全然嫌じゃなかった。




わたしは城越くんのことが好きだから、すごく嬉しくて。



でも、城越くんの気持ちが分からないから、すごく苦しい。




「ズルいよ、城越くん……」



わたしをこんな気持ちにさせるのは、城越くんだけ。



そんな彼を、ものすごくズルいと感じた。






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