あなたの恋を描かせて




……え?な、に……


何が、起こってるの?


思考が上手く回らない。



体は雨に打たれて冷たいのに。


掴まれている右手が、添えられている頭が、触れあっている唇は、すごく熱くて……




わたし、キス、されて……?



「んっ……!!」



自覚したとたん、反射的にぐっと城越くんの胸を押した。


けど、まるで離れることは許さない、というようにガッチリと頭は固定されている。



「ん……はっ……」



何度も何度も繰り返される優しいキスに、思考を働かせようとするわたしの気力までも溶かされていく。



「しろ、こしく……」



緊張がギリギリにまで達して、情けないけど声が震えてしまう。


それでも、とぼやける視界の中、ただ城越くんだけを見つめる。



「ど、して……」



かろうじて頭の片隅に残っていた疑問。



どうして?


なんでこんなことをするの?


あなたの、その気持ちが知りたい……



でも、今のわたしにはそんなに細かな感情を言葉にできなくて。



わたしの疑問を塗り潰すように、再び城越くんはが唇を重ねてきた。



「んんっ……ふっ、ぅ………」



口の中に入ってきたものにビクッと体が震えた。


さっきと違う、強引なキス。


わたしの全部が、城越くんに奪われているような、支配されているような、そんなキス。


強引なのに、無理矢理のはずなのに。


全くと言っていいぐらい、抵抗しようとする気持ちが出てこない。



それは、わたしが城越くんのことを好きだから……?


自分でも気づかないうちに、本当はこうなることを期待していたのかもしれない。






< 70 / 115 >

この作品をシェア

pagetop