あなたの恋を描かせて

side 浅葱





どうして、こんなことに……


ため息をこぼしながら目の前で寝ている葵を見つめる。



顔、さっきよりも赤くないか?



「また熱上がってきたか……」



苦しそうに眉を寄せる葵のおでこから、ぬるくなったタオルを取る。


おでこを合わせてみると案の定さっきよりも少し熱い。


首もとや頬の汗を拭ってから、タオルを濡らしてまたのせる。



葵とオレがこんなことになっているのにはわけがある。



遡ること昨日の夜。






無事告白が成功して初恋が実ったオレは、早めに家に帰ってリビングにいた。


早く葵に伝えたくて、ついでに葵が今日一日無事に過ごせたのかが心配で。


母さん曰く、少しそわそわしながら待っていた。


けど……



「あーちゃん、今日は遅いわねぇ」


「あぁ……」



いつもなら帰ってくる時間になっても、葵が帰ってこない。


ケータイもつながらないわ、と少し心配そうにため息をこぼす母さん。



「どうしたのかしら?」



……まさか、学校で何かあったのか?


言い様のない不安が広がる。



「オレ、ちょっと探して……」



ソファから立ち上がったところにガチャ、と玄関の開く音。



葵、か?


少し焦りながら玄関に向かうと……



「、葵っ!?」


「浅葱……ただいま」



ずぶ濡れの葵がそこにいて。



「傘持って行かなかったのかっ?」


「……途中で濡れちゃったからもういいかな、って」


「いやいや、よくないから」



とりあえずタオル持ってこないと。


葵にそこで待つように言って急いでタオルを持ってくる。


頭に被せて髪を拭いてあげると、おとなしくされるがままにされる葵。


いつもなら何かしら反応するのに……


ありがとう、とかムスッとしたりとか。





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