あなたの恋を描かせて



不思議に思いながらも特に気にせず。



「さっさと風呂行ってこい」


「うん……着替え持ってくるね」



少しフラフラしながら二階に上がっていく葵は、途中で振り返った。


なんだ?と思って葵を見つめると



「浅葱は…告白、上手くいった?」



心配そうに眉を下げる葵にほほえみかける。



「ん……葵のおかげで。ありがとな」



ほっとしたように葵が笑う。



「よかった……」



嬉しそうに頬を緩めて葵は上に行った。



リビングに戻ると母さんが料理をテーブルに並べていて。


さっきまで葵が帰ってこないって心配してたのに、帰ってきたらこれだよ。


いつも思うけど、母さんは順応力が高すぎる。



「あーちゃんは?」


「今部屋行った。濡れてたから風呂入るって」


「あら。じゃあ先にご飯食べちゃいましょうか」



ふわっ、と母さんは葵そっくりな笑みを浮かべる。


いや、この場合葵が母さんに似てるのか。




夕飯を食べ終わってしばらくしたが、葵はまだリビングに顔を出さない。


いくらなんでも風呂長すぎだろ。



母さんもそう思ったのかチラチラと風呂場に目を向ける。



「……風呂場見てくる」


「そう?じゃあよろしくね、あーくん」



こういうときは母さんが行くのが普通だと思うんだけど。


まぁ、オレも葵が心配だからな。



「葵?」



一応ノックをしてみるけど返事がない。


まだ入ってるのか?


……あれ、シャワーの音も聞こえない?



試しに扉を引いてみると鍵がかかっていなくて。


覗いてみると誰もいなかった。


というか使った跡も……



「まさか、」



嫌な予感がして葵の部屋に行くと。



「……マジかよ」






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