シオン【完結】
二十歳


――――――――久々にこの夢を見た。



パッと目を覚ました俺は、ベッドの傍らにあった携帯で時計を確認する。
…日付が変わる3分前か。


寄りによってこんな誕生日前に、“久美の事故の夢”を見るだなんて。


「……はあ」


久美が死んで七回忌も終えたと言うのに。
やはり、目の前で死んだと言うのは想像以上に衝撃的だったらしい。


あの時の事故を俺はよく思い出せずにいた。

まあ、あまり思い出したくもない過去ではあるからいいんだけど…。


あの日、祥太郎に誤解されて喧嘩になり、久美が先に走って行ったのは覚えてる。
どうして、久美は立ち止まったんだ。


……思い出せない。



飲み物を取りにベッドから抜け出ると、俺は冷蔵庫を開ける。
パックのお茶を取り出して、そのままゴクゴクと飲んで一息つく。


口を拭い、パックをキッチンに置いたまま戻ると再度携帯を見た。

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