シオン【完結】
きゅっと遼佑の洋服の裾を掴む。
遼佑はぴたりとその足を止めた。
ゆっくりと振り返ると、微笑む。
「どした?」
その姿は去年、三回忌で会った遼佑と変わらなかった。
「あ」
何か言おうと思うけど、言葉が出ない。
「……ん」
裾を掴む私の手を取ると、遼佑は自分の手に絡め合わせた。
それに吃驚して、私は遼佑の顔を見る。
「洋服伸びるから」
そうやって誤魔化して、照れた様に笑う遼佑に胸が高鳴った。
「……そうだね」
ふふっと笑みを零すと、私は遼佑の手をぎゅうっと握り返す。
その温かさが、嬉しくて仕方なかった。