私がいた場所。


”東條君、君には誰にも言えないような秘密があるのでしょう。私の憶測が正しければですが、私がまた生まれ変わったときにでも会いたいものです。こんなふうになるまで君の悩みに気付いてあげられなくて申し訳なかった”

目尻にたまった涙がぽろっと落ちるのを感じた。彼はすべてわかっていた。
こうなることも、私のこともすべてわかっていたんだ。それでも切腹を受け入れたのは彼が最後まで武士でいたかったからだろう。

手紙が涙で濡れてしまわぬよう山崎さんに渡して空いた手で私は顔を覆った。


「…これは、局長に渡してもええんか?」

山崎さんが言っているのは最後の私に向けての言葉のことだろう。

「大丈夫、です」

ずっと言う機会を逃していた。
いや、私が逃げていただけかもしれないが、いつかは直面しただろうことだ。
…ただそれはみんなの今までの怪我や山南さんの死を防ぐことができたということを告白することにもなる。そうでありながら全部見過ごしてきた私のことをみんなはどう思うのだろう。
軽蔑されるだろうか、裏切られたと罵られるのだろうか。それだけが少し怖い。


「ここに書いてあること、俺の想像では東條が今のこの時代より先の…未来からきたってことになるんやが」
「そんな感じに、なりますね」


力なくへらりと笑う私と、まだよく理解できてなさそうな山崎さん。
彼にしては今日はよく表情が変わる日のようだ。

いつもはへらへらと笑っていてつかめない人なのに。


「そんなみょうちきりんなこともあるんやなあ」

予想外の返事にびっくりして涙も引っ込んだ。


もっとなにか、そんなの信じられないとか今までずっと馬鹿にしてきたのか、とかそういうことを言われると思っていたのに拍子抜けだ。


「そんなまじまじと見つめられたらてれるやん。なんやねんて」
「や、もっと、違うこと言われると思ってました」
「つっこみなしかいっ」


さみしいなあといつものようにへらへらと笑う。

「なんや、否定されたかったんか?」
「そうじゃないですけど、言われてもしょうがないかなって」
「あほかて」
「え、っていた!」


急な罵声とともに指で額をはじかれた。
ぽかんと口を開けていると、山崎さんは少し芝居がかったように頬を膨らませた。


「監察方やっとるからには人を疑うのは日常やけど、その分仲間を信じんくてどうするんや。それに俺は自分の目も信用しとるつもりやしな?」
「…っ」

私の涙腺はまたも簡単に崩れ去ってぼろぼろと涙をこぼした。
今度は優しく頭をぽんぽんとたたかれて余計に泣けた。


「よしよし。今までこんな男ばっかりのところで知っとる人もどこにもおらんとよう頑張ってきたな」
「うぅっ…泣いちゃうからやめてくださいぃ…」
「なにゆうとんの、もう泣いとるやん」


ははっと笑われて私もつられて泣きながら笑った。







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