私がいた場所。
「お前も女なんだしな。一つくらい持っといてもいいだろ」
「そうですね…じゃあ、ありがとうございます」
「ああ」
「んじゃ、俺は甘味をおごってやるよ」
「えっ!?」
「斉藤にだけいいところ奪われるのも癪だしな!」
買い出しにきただけのはずだったのに二人からの素敵な贈り物に顔を綻ばせる。
「お二人に限ったことじゃないですけど、結構皆さん私に甘いですよね」
寒いといったら上着をかけてくれたり、剣術を教えてくれたり、非番の日なのに手伝ってくれたり…。お土産もよく買ってきてもらってるし。
考え始めるとたくさん浮かんできて自分でも驚いた。本当にいろいろしてもらってたんだなぁ。
「まぁな。女の子ならもてなさねぇとな」
「あまり、自由に外出させてやれぬしな」
少しだけ申し訳なさそうにいう二人に私は笑いかけた。
「私、皆さんのところに来れたことすごく感謝したいです。とっても幸せですから」
ずきん、と胸がいたんだ。
二人も笑ってくれたのを見て笑みをより濃くしたけれど、もっと胸がいたんだ。
幸せだってことに嘘はない。新選組の皆が大事にしてくれていることは分かっているし、元々新選組が好きだった私にとってはなおさらだ。
でも、こらは長くは続かない。
儚いものなんだ。
鼻の奥がつんとしたのを、あくびをしたふりをしてごまかすと前をいく二人の背をおった。
「人」の「夢」とかいて「儚い」なんてよくいったものだ。




< 59 / 137 >

この作品をシェア

pagetop