不機嫌な彼のカミナリ注意報
 これはおそらく風見さんが家から持って来たものだろう。
 そう思うと、頭の上に乗せられたタオルですら貴重なもののように思える。
 タオルからさえも、やさしさの匂いが漂ってくるようだ。

 せっかくのその好意を無駄にしないように、私はそのやさしさがこもったタオルでゆっくりと髪の雫を拭きとった。
 ほかのみんなに借りたことを気づかれないようにしながら。

 雨はしばらくするとあがった。
 みんなで残りの片づけを済ませ、帰り支度も無事終了する。

 だけど私だけ髪も服もじっとりと濡れている。
 あぁ、すぐ雨があがるのなら、雨の中であんなに頑張るんじゃなかった。
 着替えなんて持って来ていないもの。

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