不機嫌な彼のカミナリ注意報
 横でごちゃごちゃとこんなにうるさくされては、残業なんてできやしない。
 俺の中にあるイライラの感情を更に刺激されるのが嫌で、デスクの上を軽く片付けて帰り支度を始めた。
 仕事を邪魔するだけじゃなく、古傷にまで触れようとする瀬戸の無駄話にこれ以上付き合ってはいられない。

「あのころの風見くんを見ているみたい。もちろん、相手は紘美ちゃんじゃなくて緒川さんだけど」

「はぁ? それじゃまるで俺が緒川を好きみたいな言い方だな!」

「フフフ。やっぱり気づいてない。」

 おかしそうに笑う瀬戸に対し、このとき心底イライラした。

「じゃあ、どうしてそんなに緒川さんを気にかけるのよ。ほかに理由がないでしょう?」

「………」

「風見くんは自分の感情を表現するのが下手なのよ。だから紘美ちゃんにも誤解されてうまくいかなかった」

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