不機嫌な彼のカミナリ注意報
『私はバカでアホだから……太雅の気持ちがわからない』

 一年間の転勤が終わり、俺が本社へ戻される日が近づくころ、紘美が突然泣きながら俺にそう告げた。
 ―― 大粒の涙を、瞳からいくつもこぼして。

『なぜわからない? 俺が好きでもないヤツと付き合うわけないだろ』

 今思えばもっとやさしい言葉もあったし、もっと穏やかな言い方ができたはずだ。
 だけどあの時の俺は、普段と変わらない冷めた口調でそう言い放ってしまった。

 付き合ってるんだから、好きってことだろ?
 俺は……それを伝えたかったのだ。

 なのに、言い方がまずかったのか、言葉のチョイスを間違えたのか、俺の真意は伝わらなかった。


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