不機嫌な彼のカミナリ注意報
「たしかに……これまであの男に社内で浮いた噂はないよね。まぁ、あれだけ無愛想なら当然か。女が寄り付かない」

 真那が首をひねりながら、独り言のようにブツブツと言う。

「真那さん、それ違いますよ。私、同期の経理部の子から噂を聞いたんですけど……」

 也実ちゃんが真那の独り言に反応して、真面目な顔をしながら人差し指を立てた。

「噂?」

「正直……風見さんって人の振る舞いと、その噂があまりにもマッチしないんで、私はデマっていうか、なにかの間違いなんじゃないかと思ってたんですけどね」

「うんうん、それで?」

「風見さん、実はめっちゃモテるみたいです」

「「…えぇ?!」」

 今度は私と真那の声が、見事にハモった。
 大きな声を出してしまった私はあわてて両手で口を押える。


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