不機嫌な彼のカミナリ注意報
 無造作な黒髪に隠れて、横顔から彼の瞳は見えない。
 だけど距離が近づいたからか、風見さんの匂いが一瞬私の鼻をかすめた。
 
 香水ではないな。柔軟剤かもしれない。……いい香りだ。
 などと思っていたら、風見さんが私のデスクからガサっと書類を奪い取った。

「あ、それはまだ……」

「俺がやる」

 まだ出来てない分です、と言おうとしたのに、風見さんのその言葉で止められてしまった。

「手伝ってやる、って言ってるんだ」

「いや、あの……」

「お前ひとりじゃ、終わらないだろ?」


 終わらない、は言いすぎだけれど。

 その言葉と行動に、風見さんのやさしさを感じた。


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