好きより、もっと。

繋がらない電話




「お前、フザけンなよ」




どこぞのヤンキーのような口ぶりで、カズは私を睨みつけていた。

既に着替えを済ませてユニフォームを用意し終えたほかのメンバーは、そそくさとオフィスに戻って行った。

カズは『打ち合わせし忘れたことがあって』と言って、私とこの場所に残っていた。




「・・・なによ。そんなに怒ることないでしょ!?」


「お前が着ない、ッつったんだろうが!あ゛ぁん!!」


「何よ!そのヤンキーみたいなキレ方!別に何を着ようと私の勝手じゃないのよ!」


「ユニフォームは別だ」




急に声のトーンを下げて、真面目に話をしだすカズに。

結局私は何も言えなくなる。




藤澤家の雰囲気に、私が敵うはずがないんだ。




「お前、ほんとに鈍感なのな」


「・・・は?」


「少しは男の目線ってヤツを学べ。そうしないと、あまりにもタクが可哀相だ」


「タクは『どうして着ないの?』って」


「アイツ笑ってたか?」


「笑ってた」


「目も?」




目?

あの時のタクの目・・・?




いつも顔をくしゃくしゃにして笑うタク。

楽しいことがあると、大きな綺麗な目が分からなくなる程、くしゃくしゃになる。

その笑い顔が、私は世界で一番好き。








でも。

あの時のタクは、顔をくしゃくしゃになんてしてなかった。

冷静な、綺麗な笑い顔だった。



それは、つまり。

『取り繕っていた』というに相応しい雰囲気だったに違いない。


< 21 / 201 >

この作品をシェア

pagetop