明日も晴れ
2. お昼ごはん、食べに行ったり

そうと決まったら、まずは家に帰って着替えなくては。



制服のままでカラオケなんて行けない。一応この辺りで一番校則の厳しい学校だから、見つかったら厄介だ。



それよりも三年生の夏休みだというのに、カラオケなんて行っててもいいのだろうか。遊びにも行かず、勉強に浸っている子もいるというのに。



「ただいまぁ」
と、言ってしまうのは癖。



誰の返事もないし、家の中に人気なんて感じられない。



両親は共働き、私は小学校に入ってからずっと鍵っ子だ。べつに不自由はないし、寂しいと思ったこともない。



むしろ誰にも構われず、自由で居られることの方が嬉しい。



ダイニングのテーブルの上には五百円玉が一枚、添えられたメモには『お昼ごはんは好きな物を買ってね』と母の走り書き。



毎朝、母は私より先に出かけて行く。今日は帰りが遅いとか、提出するプリントはないかとか、一方的に問い掛けて返事する間も与えず慌ただしく家を出て行ってしまう。

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