美狐はベッドの上で愛をささやく

だけど、本当は……。





奏美さんが言うとおり、わたしが父を殺したんだ。


だって、思い返せば、倉橋さんと会ったその日から、父はおかしくなった。


おかしくなったというのは気が狂ったとかいうことじゃない。

以前よりも父の食欲が少なくった。




父は、倉橋さんのところに行く前まで、たくさんとは言えなくても、しっかり3食とっていた食事が2食に減った。


けっして太っているとは言い難かったけれど、痩(ヤ)せすぎてもいない体系だったのに、食事を採らないことで日に日に頬は擦り切れ、

皮膚だって健康的な赤みがかった肌をしていたのに、茶色くささくれていっていたように思う。




わたしが愚かだった……。


自分の体質は倉橋さんのおかげで治ったとばかり思って、有頂天になっていた。


でも、本当は違ったんだ。

それは、今夜、倉橋さんが言った『身代わり』っていう言葉から理解できた。


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