美狐はベッドの上で愛をささやく

*・゚★。・*誘惑なんてしてないですっ!*




 . ゜
。 。
 。





閉じた目をそっと開けると、朝の目映(マバユ)い白い光が広がっていく……。


同時に、両目から溢(アフ)れた涙が目尻を伝い、耳へと流れた。





――ここは……?





わたしがそう思ったのは、周りの景色が見慣れない場所だったから。



歪んだ視界をなんとか元に戻そうと、瞬(マタタ)きをいくら繰り返せば、目尻からは何筋もの涙が流れる。


「紗良(サラ)ちゃん、また泣いていたのかい……?」


隣に腰掛けた紅(クレナイ)さんは、わたし顔を覗き込んで、クスリと微笑んだ。


優しい指で、目尻に溢れる涙を拭ってくれる。



それがとても嬉しくて……。

頬にある紅さんの指に触れた。




「紗良ちゃん、何か飲む? 喉(ノド)が渇いたでしょう?」


「ふ…………」


声が漏れたのは、紅さんの親指が閉ざしたわたしの口をなぞったから。


「紗良ちゃんは美しいね……」


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