美狐はベッドの上で愛をささやく

「くれない……」




わたしがぽつりとつぶやくと、狐はこっちを向いた。


狐と目が合うと、わたしの体はなぜか熱くなった。




だけどそれは焼かれるような熱さじゃない。


体の芯からとろけてしまいそうな、そんな熱さ。



「あ、あの……」



たかが狐。

動物に人間の言葉なんてわからないと思うのに、どうしてかな?


わたしは口をひらき、さっきまでの恐ろしい出来事も忘れて狐に話しかけた。


すると、狐は紅の瞳をスッとすぼめて去ってしまった。





……その時、わたしの身に、これまでにない、何かが起こるのを感じた。


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