美狐はベッドの上で愛をささやく

着替えもしないで、そのまま――。

空っぽになった時間を、わたしは過ごしていた。




「お父さん……っ……っくぅ……」

涙は溢れ、絶えず頬を伝って流れていく……。



人間って不思議。

食事をしなくても、寝ていなくても、こうやって体内にある水は絶えず流れていくのだから……。


頬を伝うこの涙の意味は、父を失った悲しみと、死なせてしまったという懺悔(ザンゲ)。


そして、また繰り返される苦しい生活を思っての涙……。




……今日もまた、恐ろしい孤独な日々が続いていく。


それを考えると、とてもじゃないけれど気が遠くなる。





わたしは何もする気さえ起らなくて、椅子に座ったまま、明けていく空を見つめていた。

すると……。




コトリ。


真上から物音が聞こえてきた。

ここはこの家の最上階。

天井にネズミがいてもおかしくはない。

だけど、これはそういうモノじゃない。


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