美狐はベッドの上で愛をささやく
◇最終夜◇

*・゚☆。・*死神。*




 . ゜
。 。
 。





「まだだ! 俺はまだ、諦めない!!」


身動きが取れなくなったわたしの頭上から、唸るように、その人は言った。


その人が誰なのかは、もう知っている。



霊体に悩まされていたわたしに手を差し伸べてくれた、杏子(キョウコ)さんの恋人の倉橋(クラハシ)さんだ。

彼はいつの間にか、屍(シカバネ)となってしまった杏子さんから離れ、わたしのすぐ背後に来ていた。


それは、人とは思えない、とてつもない速さで……。


「紗良(サラ)!!」


紅(クレナイ)さんはひざまずいている体勢から立ち上がろうとする。


だけど、彼の体力は限界に近づいていた。


また、地面に膝がつく。




「俺はこの力で、杏子を甦(ヨミガエ)らせる!! 誰にも邪魔はさせない。たとえ、妖孤であっても!! そのために、俺は新たな力を手に入れたのだから」


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